| 平成21年度理事挨拶(50音順) |
| 20 日本化学連合理事を拝命して | 触媒学会理事 東北大学・多元物質科学研究所 所長補佐/教授 |
村松 淳司 |
| 日本化学連合が誕生して早2年が過ぎようとしています。化学連合は、化学という学問領域から、化学に関連する産業に亘る非常に幅広い分野の、いわば総元締め的名前を持ちますが、実はそうではなくて、化学一般とか、たとえば化学とはなんぞや、とか、あるいは化学から何を生み出すのか、などという、社会一般の人が化学をイメージしたときに期待したり、想像したりすることへの、ひとつの解を示す団体ではなかろうか、と私は勝手に思っています。マンガのマッドサイエンティストには、よく、白衣を着た、いかにも化学者、それも有機化学者と思われる人が登場し、世界を混乱のるつぼに陥れようとしますが、そんな化学への、少なくとも的確ではないイメージを改善し、もっともっと身近な化学の世界を拓くのが、何となく、化学連合の姿かな、とも、思っています。 化学を通して、将来、日本いや、世界がどうなっていくのか、あるいは、世界をどうしていくのか、化学の将来ビジョンを、夢と現実の間を行ったり来たりしながら描くのが、私たちの使命とも思います。理科離れが進むと言われる現在、それでも、テレビ番組制作では科学的なものへの欲求が反映されたり、パソコンや携帯電話を使ったインターネットの爆発的な普及を見ると、決して、理科離れという状況ではなく、ほのかに興味を持った子どもたちへ、化学から温かい手をさしのべるのが、どうも遅かったり、まずかったり、としているのではないかとも思います。そんな現状を少しでも改善できたらいいなあ、と、黄昏どきにネバーランドに身を置きながら、ふと考えています。 |
| 平成21年度監事挨拶(50音順) |
| 1 学協会の連携 | 監 事 | 岩村 秀 |
| 旧制度の日本学術会議第18期の化学研究連絡委員会において、「化学者コミュニティーの社会への発言力と政策決定者への提言力」の強化のための学協会の連合の必要性が議論されてから、優に5年以上経過している。問題意識、危機意識は間違っていなかった。 最近いくつかのサイエンス・カフェをはしごしてみて感じるのは、世の中が化学及び化学技術者の発信を強く期待していることである。特に、二酸化炭素濃度の上昇と地球温暖化の関連、遺伝子操作食品の安全性の二点である。大気中の二酸化炭素濃度の上昇を抑制するためには、当面原子力発電に頼らざるを得ず、わが国の技術力は炉の設計・製作では世界をリードしているように見受ける。一方、MOX燃料の国産化を含む核燃料廃棄物の処理方法については、もう少し化学系の学協会が一緒になって議論し、発信する必要を感じる。第5福竜丸事件(1954年)に際して、分析化学者が中心となってわが国の科学者が独自につきとめ社会に発信した“死の灰”の正体は、残念な結果ではあったが、社会に対する発信で疑心暗鬼をいち早く払拭したと言う点では特筆すべき事柄であった。 社会に対して、また次の世代のためにという視点が生かされることを願う。 |
| 2 日本化学連合ヘの期待 | 名古屋大学名誉教授 | 岡本 佳男 |
| 日本化学連合には、立上げ準備期間を含めて約4年間関与しており、今期は監事を務めさせていただくことになりました。個人会員の実数が7万人を超える化学者コミュニティー最大の組織であり、「社会のための科学」、「社会のための学会」を標榜しておりますので、組織としてのベクトルを揃えることができれば社会に対して大きな影響力を発揮し、貢献できるはずです。現在は、加盟17学協会の比較的弱い連携のもとに運営されており、その力を十分に活用できる運営体制になっているとは言えないと思います。これからの活動を通じてその存在意義を高め、社会から必要と認められるよりよい組織に発展させ、連合の設立目的に着実に近づくことを期待いたします。 |
| 平成21年度顧問挨拶(50音順) |
| 1 ご挨拶 | 顧 問 | 赤岩 英夫 |
| 化学連合の準備期間は呼びかけ人として、発足後の2年間は監事として連合に関わってまいりました。この2年間、石田事務局長1人の事務体制で、化学会館の一隅を根拠にしながら岩村、御園生両会長の下、業務、会計ともに、懸命に、そしてきちんと行われたことを確認して監事を退きました。 前世紀後半の科学技術の驚異的発展と、それに伴う分野の限りない細分化が人類にもたらした功罪は今、再び細分化から総合化へのパラダイムシフトを求めているように思います。化学の世界に限っても同様の事情にあり、化学の発展に伴って多くの学協会が設立されてきました。このように考えると化学連合の設立は時宜にかなったものといえましょう。 化学界全体のニーズをまとめ、世間に発信するとともに、科学技術行政へも物申す機会が増えてくることにより、化学連合の存在意義が広く認識されんことを願っております。 |
| 2 日本化学連合の意義 | 安部 明廣 |
| 私の主たる学会活動の場は高分子学会であった。振り返ってみれば、1951年の創立から今日まで、高分子の科学・技術も学会もほぼ順調に成長し、大分以前から会員数は飽和に達している。各人の研究の内容は世界の歩みと共に大きく変化しているが、学会内での交流は必然的に閉鎖的にならざるを得ない。これは多くの大規模学協会に共通する事態であろう。一方で学会は、若い人達が将来の挑戦課題を見出せるような刺激的な場であることを常に要求されている。会員数の成長がない状態で、学会がどう変貌すべきか。これは一学会の規模を超えた課題である。設立準備段階から一貫して、私が日本化学連合に期待したのは、単なる学会統合や再編ではない真の“学会改革”の先導であった。連合の規約の起草を担当された中井副会長に「志を果たしたら解散する」という条項を加えるよう求めて拒否されたのは今は思い出となった。日本化学連合では学協会を“下”から見た問題点の抽出と将来への対応を議論して頂きたい。学協会の“上”に永続的な組織としての「連合」は要らないと今でも思っている。御園生会長のご尽力に期待している。 |
| 3 あいさつ | 奈良先端科学技術大学 理事・副学長 |
村井 眞二 |
| 基盤的な学術分野は、数学、物理、化学、生物です。これらはおたがいに入れ込みあいながら、それぞれの領域は拡大しつつあります。分野によりずいぶん性格がことなります。応用分野との距離は、化学と生物においてきわめて近いところが多くあります。実験室の発見が産業につながりやすい。研究課題の大きさ感では、巨大なのが物理、ついで数学、生物の順で化学はずっと離れておおむね小粒です。化学には多種多様な課題があるという良さがありますが、反面、天頂衛星とかDNA全解析などのビッグサイエンスが不在です。応用では、化学は主役でありながら陰の存在です。我が国では学会の気風も異なります。化学会はネクタイ、応物学会はノーネクタイ、応用生物学会は託児所が大にぎわい。化学会で新発見があれば、翌年は皆がそれから引く。応物学会で新発見があれば、翌年はそこにわんさとむらがる。化学の広がりと化学中心産業の使命とは、ということを考え続けねばと思います。 |