会長あいさつ

化学および化学技術関連学術団体(化学系学協会)の連合体として 学協会強化と化学・化学技術の振興を目指して (2022・2023年度会長就任に際して) 会長 岩澤 康裕

会長 岩澤 康裕

2021年度総会後の理事会にて、2018・2019年度および2020・2021年度に引き続き2022・2023年度会長に選任されました。日本化学連合は、化学系学協会(現在13学協会;約7万5千人個人会員)の連合体として、各学協会と連携し、学術と産業を強化すると共に、競争力の源泉である研究教育環境の一層の改善による研究力・教育力の向上と時宜を得た人材育成により国際競争力強化を図り、あわせて化学と化学技術の振興を通して社会に貢献する活動、および政策提言・情報発信を行っています。今後とも一層のご支援、ご協力をお願い申し上げます。

日本化学連合は発足から15年、一般社団法人に移行後12年が経ちました。広く化学系学協会の連合体として体制を整え、種々の活動を進めてきています。他方、本連合の目的に資するための事業である、分野の蛸壺化脱皮と学協会ネットワークの構築、学協会に共通した様々な課題解決、DX・GX・高度物質循環など化学ビジョン作成、社会啓発などが十分に行えていないことも事実です。

近年、学問分野は細分化が進み、専門ごとの中小規模の学会が多数存在します。化学系も例外ではなく、専門分野に特化した中小学協会はたくさんあり、学問的にはその分野の専門家が集まり深い議論ができるそのような学協会の存在は望ましいと考えます。しかし、その分野(重箱)内だけの専門家による議論や最先端・最先鋭研究の方向は、往々にしてその分野(重箱)の尖った先鋭部分である重箱の隅に向かうことになりかねません。我が国は、専門分野を超えた国際的な注目領域、新興・発展領域への貢献が乏しく、研究の質と影響力の低下が指摘されています。その状況を生んだ原因に、若手研究者の自由な発想を束縛してしまう我が国の官産学の短期成果主義や過度の課題解決型研究指向、自由なチャレンジングな知的好奇心でなく研究費の出やすい課題への好奇心に変容、若手研究者の安定ポジションの減少などの研究環境の問題に加えて、細分化されすぎた専門学協会の限界の顕在化と蛸壺化が一因になっていないとは言い切れません。

日本化学連合の事業として、化学系学協会の意見集約、政策提言、情報発信、社会の啓発と化学普及、国及び社会一般からの諸要請への対応などに加えて、学協会・事務局運営、財政、会員管理、出版、教育活動など学協会間でかなり共通・重複している運営機能の集約、効率化の課題を審議して、新しいビジョンを示していく必要があります。そのため、日本化学連合では、2018年に、我が国の化学系学協会のほとんどが参画する化学系学協会連絡会を立ち上げました。現在、23学協会が参画しております。役員、理事会および各種委員会を構成し日本化学連合を運営する正会員13学協会の活動に加え、化学系学協会連絡会の活動を通して、日本化学連合の目的と事業を推進していきたいと思います。 日本化学連合へのご理解と一層のご支援ご協力をお願いする次第です。

 

電気通信大学特任教授、東京大学名誉教授